開催説明会記念講演要旨

第59回ビジネスシヨウTOKYO 2007
開催説明会記念講演会実施(2007.1.24)
(株)IRIユビテック 代表取締役社長 荻野司氏が講演

荻野司氏講演風景
「第59回ビジネスシヨウTOKYO 2007」の開催説明会とともに実施した、(株)IRIユビテック 代表取締役社長 荻野 司氏による記念講演は大変盛況でした。
以下はその講演内容の要約です。(文責:事務局)


進化するユビキタステクノロジーと新ビジネスの潮流―サイバー空間とリアル空間におけるWeb2.0型ビジネスを題材にして― (株)IRIユビテック 代表取締役社長 荻野 司 氏
(株)IRIユビテック 代表取締役社長
荻野 司 氏

高齢世帯・団塊世代へのアプローチが重要に

 1992年に日本で初めてWebが開かれた。1995年前後にインターネットの黎明期は始まり、1997年頃からインターネット人口が急速に増えてきた。そして、2000年頃になると日本でも大体行き渡ってきたなといった状態となった。インターネットはWebやメールだけではなく商用利用されており、YAHOO!オークションやネットトレーディングなどでかなりお金が動いている。ネットトレーディングは誰が利用しているのかというと、若年齢層で、ネット取引の大半であり小口取引が多く、底辺は拡がっているが高額取引はあまり行われていない。
 総務省がu-Japan構想の一環として、2010年をめどにデジタルデバイドをゼロにする、ブロードバンド・ゼロ地域をゼロにする、という目標を掲げている。日本の全世帯数は5,300〜5,400万世帯だが、既存のブロードバンドユーザーは2,500万世帯と半分でしかない。これからインターネットを利用しようという層、50歳以上の高齢世帯・団塊世代の預貯金残高が最も多く、最も裕福なのだから、この層へのアプローチはeビジネスを考える上では大変大事なのである。高齢者をはじめとしたユーザーを新たなターゲットとするために過疎地域に対してはインフラ整備を行い、高齢者にはまだまだ使いにくいのだというユーザーがおられるので、もっと利便性・簡便性を上げることが必要となる。
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必須社会インフラとしての“安全”や“信頼”が求められる

 ネットワークインフラは5年、10年の置き換えではなくて10年、20年、下手をすれば電話のように100年単位の歴史となる。一方、コンピュータデバイスというのは移り変わりが激しいわけで、ネットワーク寿命の長さを考えて、アプリケーションも含めた製品改良をしていかなければいけない。
 ネットワークというのを敢えて外してコンピューティングということで考えた上で、ライフラインと同等の社会インフラであるという定義をしてみると、現在はちょうど黎明期から発展期を過ぎた普及期に至っているわけだが、その次へのステップアップというのが非常に重要である。ブログであるとか、SNS、CRMなどと言われているが、それ以上に必須社会インフラとしての“安全”や“信頼”が求められている。
 ネットワークのこちら側、ネットワークそのもの、ネットワークのあちら側というような言い方がある。こちら側とは我々、クライアント側であり、あちら側とはサーバ側のことである。初期の頃のインターネットはあちらにポータル(Web1.0)があって、ネットワークはダイヤルアップ回線や2Gのモバイルで、こちらは文字情報(Eメール)を使っていた。今の世代はどうかと言うと、Web2.0と総称しているが新しいWebテクノロジーがでてきて、今までは情報のアウトプットだけだったのが我々が参加できるような仕組みになってきた。そして、ネットワーク側もダイヤルアップの細いナローバンドから太いブロードバンドに変わって、文字情報だったものがXMLベースで制御できるような仕組みに変わってきている。
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Web2.0的なセンサーネットのマルチユース

 この講演会場のような場所の照明や空調の制御にもインターネットが利用されるようになってきており、IPv6というプロトコルを使ったファシリティネットワークも現れてきている。このようなビル内のネットワークは埋め込んでしまうため何十年と変えられないものとなり、品質を含めた安全性が要求される。ファシリティネットワークの中央監視装置からみたネットワークは一見すると複雑になっているようだが、いろいろなものが全てインターネットのインターフェースでやりとりできるようになり、普通のWebにアクセスするような形の言語体系でそれぞれの制御装置が動くようになった。いろいろなビルディング・オートメーションのアプリケーションやそれにまつわるインフラ、その中に組み込まれているセンサー類や通信インフラといったものを、同じプロトコルでコストをかけずに全て集合させようというのが、今言われているWeb2.0の概念的なはしりではないかと思う。
 警備会社が人の侵入を防ぐために設置した人感センサーは、人が入ると人を検知してブザーが鳴るが、このような監視のための人感センサーは別の目的には使われておらず、それを別の目的で使うことができればどうだろう。たとえば、“人が入ってきたら電気が点く”、“人が出て行ったら電気が消える”といった具合に使うこともできるわけで、1センサーであっても用途を多用途に変えられる。つまり、防犯のために用意したセンサーネットワークも平時に利用することができる。マルチユースとかトリプルユースと言われる仕組みがここ数年求められているのだが、これはまさしくWeb2.0的な考えなのである。
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バラバラの情報をマッシュアップ

 東大の江崎先生が主宰されている『Live-E!』という活動がある。これは、“地球の環境を視覚的に見ていこう”というプロジェクトだが、そこから簡便で安い、フットプリント(設置面積)を最小化したIP気象センサーを作って欲しいという依頼があり、製作した。このセンサーはインターネットの口に繋げば、温度、湿度、気圧、位置、風向、雨量などが全て測れてしまうといったものである。現在は教育用の仕組みとして作られているが、このデータ自身をビジネスに応用することができる。つまりIPというものにいかに優秀なセンサーを付けていくかということであり、そしてIPというプロトコルを使ってそのセンサーの情報をどこかに集約しておけば、いろいろなマーケティングに使っていけるのである。
 全国の大学や自治体に置かれたIP気象センサーのデータは、自動的に東大の計算機センターのサーバに逐次送られてくる。そのデータをデータセンターのサーバで集約し、GoogleEarth、GoogleMapやひまわりの画像などとマッシュアップ(MashUp=データとの連携)すると、地球の絵を見ながら台風の移動が見えるとか、センサーユニットの情報が棒グラフで表されるといった具合に、気象データを多様な地図で可視化することができる。同じように、都心部のビルの3D情報とセンサー情報のリンクを取って温度分布表示を行うと、ヒートアイランド現象が見えたりするといったことが可能になる。
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Web2.0の本質とその多様な技術

 ネット証券をはじめとするオンラインマーケットの増大、消費者コミュニティが形成される土壌ができたということで、Web2.0型の土壌もできたのだと考えている。つまり、インフラができたお蔭でユーザーが参加する、そして、ユーザーが参加するような市場があったからこそ新しいWebテクノロジーも多様化されたのではないかと思っている。AmazonやGoogleは以前からあったが、ビジネスになるようになったのはインターネットが家庭に普及して、誰でもがWebを利用する時代になったためである。
 また、顧客コミュニティ・顧客参加・顧客貢献といった場合、顧客コミュニティは昔からあったと思うし、顧客の貢献というのもアンケート情報やはがきを送るといったようなことがあった。しかし、顧客が参加していたかというとそれはなかっただろう。
 Webの利用をさらに推進したもののもうひとつがAJAXだ。Web画面で、毎回、リロードを行わなくても、入力に応じてスムーズに画面を変化させることができるようになった。Webの画面を開いて絵を摘んだら、その絵がWebから出てしまうとか、Web画面を自分が作っていないにもかかわらずWebの画面をカスタマイジングできてしまうだとか、そこに表されたグラフがマウスのクリックでもっと詳しく伸ばすことができるといったようにWebの概念を大きく変えたのである。
 SaaS(Software as a Service)はWebサービスの一環で、“not ASP”と言われている。ASPというのはユーザーがID、Passwordで参加、何も持たなくてもいろいろなことがやれるというものである。一方、SaaSは従来のASPを拡張し、細かなカスタマイズや既存アプリケーションとの連携を可能としたWebサービスだが、まだまだ実践されてはいない。
 “ロングテール(Long Tail)”とは売れ筋ではない商品のことで、Amazonなどのようにインターネット、Webを活用し、ロングテールを求める顧客相手に利益を上げる企業も登場している。
 “ブログ”(blog)は日記のようなもので、書き手、読み手の“参加”によって実現されるメディアである。ブログを書けば書くほど検索エンジンの上位に上がっていく仕組みがあったりとか、そのブログからトラックバックという仕組みでリンクが貼られて、いろいろなブログ同士が連携していくような仕組みにより“ブログスフィア(blogsphere)”と呼ばれる世界が形成されている。
 タグ付け(Tagging)というのはあまり日本では聞かないが、Flickrなどではよく使われている。記事や画像情報に提供者の代わりにユーザーがタグ付けするというものである。たとえば、この絵はどんな絵だと言う意味情報をユーザーが緩やかに付けることができるといった仕組みや、ユーザーの注目度だけではなく多様なキーワードをタグ付けできるというのが特徴である。つまり、ひとつのコンテンツにタグが貼られることによって、いろいろなところから検索したときに引っかかりやすくなり、皆の意見が緩やかに反映されて、玉石混交だったコンテンツから段々良いものが選ばれていくフォークソノミー(Folksonomy)といった仕組みである。
 インターネット上の人々が協力してWikipediaのような百科事典を制作しているが、皆でチェックしあっているのでいいよということで多くの人に利用されている。  充実した利用体験(Rich User Experience)というのは動画像を使ったりして、自分の経験を人に伝えやすくした『セカンドライフ』のような仕組みで、どんなに言葉で説明しても分からないことがすぐに体験できる環境のことである。
 “顧客が貢献者(User as Contributor)”というのは口コミ情報のことであり、ネット上のサービスにおいて、他のユーザーの意見・評価を信用する構造が生まれている。
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Web2.0の潮流、4つのポイント

 我々はEnNetforum(エンタープライズ・コラボレーション・ネットワーク・フォーラム)という活動をしており、ここでブログやSNSに関する勉強をし、ビジネスに繋がるものはないかと議論をしている。
 昔からあったと言えばあったのだが、最近は「プロが考えるよりはユーザーに使わせてしまえ」ということで、βバージョンを配って、ユーザーがマッシュアップしていくということが進んでいる。
 ポータルサイトもマッシュアップにより進化している。従来のレガシーポータルは専用インターフェースなので、すべてのデータを自分のところに抱え込んでいるケースが大半である。ところが、マッシュアップされたポータル、ユビキタスポータルは気象データ、店舗データは全てAPIが定義されていて、そこから引っ張ってこられるような仕組みになっている。だから、この連携が成り立っていないとマッシュアップはできない。GoogleはたまたまこのAPIを公表してくれているのでマッシュアップができるのである。
 SNSは、600万人を突破したと言われるMixiのような一般型SNSから、MySpace、YouTubeなどの専門型SNSへ入ってきており、次にくるのが企業SNSとか学校SNSで、社内コミュニケーションの強化、ナレッジの共有を図るために利用されることになろう。そして、次にくるのが地域の活力であるとか、地域コミュニティの強化のためにSNSが利用されるのではないかと思っている。これまでのポータルはどちらかというと片方向だけのサイトでしかなかったが、SNSの場合には参加型のアプローチもでき、コミュニケーションの質が双方向になっているということと、グループウェアと違うのはより自分中心に動いているということだと思う。
 まず、
 (1)ネットワークコンピューティングの進展がロングテール型ビジネスを成立させたのであり、次に、
 (2)顧客のコミュニティを作ったり、顧客貢献をしたり、加えて顧客参加できるような仕組みを作っているのがブログ、SNS、アフリエイトだろう。そして、テクニカルな面では、
 (3)Webのデータ連携がやりやすい仕組みができたということで、知識の集約と利活用が可能となった。さらに見る側の立場としては、
 (4)スムース・カスタマイジングというようなWebインターフェースの仕組みができて、UIの視覚化、専門型から一般型へ移行した
という、この4つが非常に大きなWeb2.0の潮流のポイントではないかと考えている。
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次世代コンピューティングのキーワード

 WebX.0、LifeKit化、ユビキタスコンピューティングが次世代コンピューティングに向けたキーワードである。WebX.0というのは、例えば、自律コンピューティングとソフトウェアロボットと考えている。端末が自立的に情報を収集して、判断を下す時代がくるのではないかというもので、実際それに類するものとしては『カブロボ』などがある。
 LifeKit化というのはセンサーの話で、リアルワールドと仮想の世界を同期させるためのセンサーデバイスである。ユビキタスコンピューティングとはソフトウェアロボット間通信のようなものである。例えば、デジタルカメラ、赤外線通信、バーコードリーダーなどユビキタス系テクノロジーを用いたデバイスのことをLifeKitと言っており、生活小道具、電子アーミーナイフといったものがでてくるのではないかと考えている。ただ生活小道具とは言っているが、これは軍事の世界では当たり前になっていて、いくつ持っているのかというほど兵士はIPアドレスを持っている。だから、一人の兵士が沢山電子ツールを持っていて、そのセンサー情報によって本部は監視しており、兵士を通して戦場を見ているといったような世界となっている。つまり、リアルワールドとの同期といったものが戦場の世界ではかなり行われており、それが我々の一般の生活においてもやがて必須の社会インフラとなるだろう。
 センサーデバイスによってリアルワールドがネットに投影されているということだが、その投影された結果から得られるもの、鏡像から新しい計算が可能となる。単に、コンピュータワールドにリアルな世界が投影されるだけではなく、コンピュータワールドに入った時点でさまざまな計測器械を使うことによって、いろいろな仕組みが分かる。先述したGoogleEarthを使ったマップもそうで、あれを使えばひまわりを覗いたときの地球が見えるし、雲がかかっていると温度が下がっているというようなことが分かる。これは当たり前のことのようだが、それを実際に試してみることができるわけで非常に重要だ。
 現実的には情報は山のようにあり、マッシュアップする以上に情報は氾濫しているが、その世界を正しく整理して収拾できれば、かなりいい情報が得られる。つまり、これがタグ付けであり、タグ付けをして、意味情報をうまく入れて整理していけば、何が正しいか評価・選択することができる。口コミ情報を集めているだとか、リッチコンテンツだというような話であり、評価を皆でやっていこうという世界なのである。そして、そういう世界がまさしく来ていて、これがうまく回ればいいものが見えてくるというように考えているが、まだこれらはAmazonやGoogleのようには至っておらず、ここをどうやってビジネスとしていくかというのは我々の課題でもある。ただ、SNSを見れば非常に明らかで、これからどんどん企業へ入っていくことになると思われ、本当に芽が出てきているのだから、こういうところを我々はうまく掴むべきではないかと思っている。

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