開催説明会記念講演要旨

「ビジネスシヨウTOKYO 2008」、「CSR/コンプライアンス・ソリューション2008」、
「ICカード・タグ&eビジネス2008」の合同開催説明会

上村 孝樹氏 講演風景
 「ビジネスシヨウTOKYO 2008」、「CSR/コンプライアンス・ソリューション2008」、「ICカード・タグ&eビジネス2008」の合同開催説明会とともに実施した、経営・ITジャーナリスト/コンサルタントであり事業創造大学院大学客員教授/金沢工業大学大学院客員教授の 上村 孝樹氏による合同記念講演は大変盛況でした。
  以下はその講演内容の要約です。(文責:事務局)


合同記念講演
2008年、企業市場を拡大するIT経営
「内部管理」から「競争優位」へのシフト
上村 孝樹氏
経営・ITジャーナリスト/コンサルタント
事業創造大学院大学客員教授/金沢工業大学大学院客員教授
上村 孝樹 氏
上村孝樹ホームページ http://www.kamimura.cc

ITを積極的に使って成功を収めれば勝ち
 IT経営というのは、21世紀市場で勝ち抜く経営戦略を創り、それをITの高度活用で実現に導き企業の競争力を高める、というところにポイントがある。私は日経BP社に25年間在席したが、その間、IT活用が内部管理の面で注目を浴びた時期と、それを企業の競争力の方に拡大しようという時期があり、これまで波と言うか周期、サイクルがあった。ベンダーもユーザーも、競争力を向上させるというところで一致した時は、IT市場は活性化し、元気になっていく。現在の状況は「競争優位」というよりも、情報セキュリティだとかシステム管理・システム監査など、どちらかというと「内部管理」の問題が中心になりがちだ。こういう時、IT市場は全体として停滞しているというか、あまり活性化されていないと言える。
 日本では携帯電話のインフラなどハイレベルなインフラができている。これを使って、思い切ってビジネスモデルを転換していけば、IT市場というのはかなり爆発的な状況になるはずなのだが、残念ながらなかなかそういう風にはならない。
 その理由の一つを挙げると、日本のIT市場は一部上場企業が仕事の発注元として牽引しており、それら一部上場企業の情報システム部門は米国型ではないからだ。
 米国型の場合、事業部門毎に事業責任者がおり、責任と権限を持って事業を遂行し、成功すればその責任者は莫大な収入やメリットを得ることができる。そのため、自分たちの事業をいち早く成功させるための手段として情報システムを駆使するといった考え方である。だから、基本的には事業部単位毎に情報システムの投資を行い、情報システムの管理を行うというやり方である。
 だから米国では最先端の技術を他のユーザー事例がなくても早く取り入れ、積極的に使って成功を収めれば勝ちなのである。失敗してもチャレンジしたことによる経験が生まれるわけで、その経験を持って、次には成功するからというプレゼンテーションを行い、よその会社に移って成功していくといったパターンが成立する。

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IT市場を活性化させるには
 ところが日本はそうではない。これまで終身雇用制といったものがベースにあったということのもよるが、全社がひとつにまとまっているのである。事業部門の長がいても、社長が一番偉いというピラミッド構造があり、会社全体を管理するといった形で組織構造ができていて、コンピュータもそういった利用のされ方をする。日本の情報システム部門は現場のビジネスのソリューションというよりも、全体的な共通の業務処理を先に行おうとする。だから、情報システム部門の責任者は共同利用センターとしての役割を果たしていれば、自分のミッションを果たしたという説明ができる。
 現場のソリューションに積極的に出ていって、現場のビジネスモデルを変え、それを支援していくということになると、それは全て個別の問題になり、共通業務にはならない。そこで、そういうものに手を出すよりも、全体のプライバシーの問題や内部統制の問題に対する業務の方が分かりやすく明確なので、そうした業務のIT化の仕事は非常に興味を示す。
 セキュリティの確保や内部統制支援などは内部管理の問題であり共通業務である。こういうテーマが目の前にぶらさがっているとそれに満足してしまう。内部管理の問題といえども、競争優位を獲得するためにどうすべきか、というふうに考えていけば大きなITニーズの波が起こるはずだ。ただ、その時の最終意思決定は日本の企業ではCIOでなくて、経営トップなのである。だから、経営トップに競争力を向上させる情報化投資に関心を向けさせないと、IT市場の活性化には繋がっていかないのである。

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コストリーダーシップから付加価値重視戦略へ
 日本企業はIT活用を内部管理強化としてとらえればよいのか、というととてもそんなのんびりしたことを言っていられない。いつまでも20世紀型の経営をやっていては生きていけない。21世紀型の市場で勝ち残る経営に切り替えていかなければならない。これは急務である。
 20世紀は市場成長の時代であり、勝ち残るキーワードはコストリーダーシップであった。事業規模を拡大して数量を増やすことで価格を下げ、価格でリーダーシップを取って、シェアを獲れば勝てる、というのが20世紀の論理である。ところが、すべての企業が成長戦略を採るから21世紀はたちまち供給過剰となり、成長は止まる。
 生産能力、供給能力があまりにも大きくなってしまい、世界中の供給能力が爆発的に増大しているにもかかわらず、需要は増えていない。常に供給過剰となる21世紀は成長によるコストリーダーシップではなく、ビジネスの利益を継続的に出すために付加価値を相手にいかに認めさせるか、ということが重要になる。
 付加価値というのは成長戦略による総花的なソリューションで得られるかというとそうではない。基本的には1社1社、ひとり一人の個別ソリューションによる「個客満足度」によって得られるものである。提供者側がどんなに素晴らしいものだと言っても、それに興味のない人、分からない人にとっては、価値はゼロなのである。付加価値というのは極論すればOne to Oneなのであり、個別の問題なのである。
 したがって21世紀は自社の付加価値を相手側に認めさせるために、「誰に」「どこに」照準を合わせてビジネス展開をするのかというビジネス戦略が非常に重要である。これをセグメンテーション戦略と呼び、満足度を確実なものにするためにカスタマイゼーション、パーソナライゼーションをIT活用で可能にしなければならない。
 次に戦略を実行に移す段階で重要となるのが20世紀型のビジネスモデルから脱却して新しいビジネスモデルを構築することである。例を挙げよう。
 日本企業の多くは、BtoB(法人取引)を行っているが、その場合、受注活動は営業員が企業を訪問して、そこから営業活動を始めるというやり方を基本にしている。20世紀からの営業員中心の典型的営業スタイルである。しかし、このやり方をしていくと21世紀が要求する「個客」を満足させる付加価値ソリューションを行うにはコストと時間が掛かり過ぎる。営業部門のビジネスモデル大転換が必要である。
 抜本的な解決策として、ITの高度活用でこれまで「行く営業」から「行かない営業」に変えていくことである。
 BtoBであっても製品・サービス・企業情報をホームページなどで徹底的に発信して、営業員が企業に行った時には契約書に判子を押して貰うだけ、といったビジネスモデルに変えなければならない。21世紀に競争力を上げるためには、大企業であっても現場のビジネスモデルを変えて、個別ソリューションをITで支援していかなければならないのである。

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ITの戦略的活用で競争優位を獲得
 私はこの3年ほどIT経営百選(http://www.itouentai.jp/hyakusen/index.html)選考委員会の委員長として中小企業のIT経営を評価して認定し情報公開してきた。21世紀型のIT経営を展開している優れた中小企業では、ITで革新的なビジネスモデルを創り、売上げは小さいけれど経常利益は10%を継続させる、という付加価値が高い会社がいくつも出現してきている。
 携帯電話などを見ても分かるように、905などになるとフルブラウザが付いたり、国際ローミングができたりする。だから、携帯電話をひとつ持っていれば、国内でも海外でも話しができ、メールも見ることができ、いろいろな資料をブラウザでひろげ見ながら、どこに行っても意思決定ができることになる。このような最新機器を使えば中小企業でも、最前線のビジネスモデルを徹底的に根本的に変え、そして、顧客データベースや統合データベースにアクセスしてアクションをスピードアップしたりソリューションの高い業務を行う、ということが面白いくらい安いコストでできるようになった。
 つまり日本企業が生き延び、競争優位を獲得するためにできる一番安く確実な方法は、ITの活用をビジネス戦略としてやることである。

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トップの見方を変えるキャンペーンや情報発信
 ITベンダーが、日本の大企業にIT投資の促進を図るには、経営トップの見方を変えるようなキャンペーンや情報を発信することが重要である。トップ自らリーダーシップを発揮してIT投資を牽引していくような気持ちに変えることである。
 一方、中堅中小企業では、大量生産、大量消費の中に組み込まれないよう、大企業とは違う道を歩み、付加価値を上げることを重視した経営戦略でIT活用を成功させている会社が出てきている。経常利益10%と言えば昔の中小企業の世界では夢のような話だが、まだ数が少ないとは言え、それが現実に起きている。これは皆、ITの力なのだ。規模を追わないで、自分たちのターゲットのお客様と長い付き合いをするという付加価値型のビジネス戦略を作って、それを全面的に支援しているビジネスモデルにITを活用しているのである。
 こうした企業ニーズはこれからどんどん出てくるのでITベンダーはソリューション力が高いという情報を積極的にユーザーに向けて発信していかなければならない。日本の場合には全く導入事例のないものを先に使うということを避けるために、ITベンダーは導入事例を詳細に発信していくことが重要である。

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大型合併で生き残り競争
 SIの会社には一部上場クラスの企業が沢山出現している。そして、それらの大企業では「年間売上高3,000億円が生き残りの基準だ」というようなことを言うトップがいる。戦略はM&Aであり、それをやっておけば自分の地位は安泰だ、というようなムードになってきている。私は合併が悪いとは言わないが、SI企業の中身を21世紀市場に対応させるように変える、つまり本格的なソリューションができるような構造に変えることが最優先課題であると考える。それは売上げを大きくすることではなくて、中身の質を改革するということであり、それが合併や3,000億円ということと一致すれば良いのだが、そういう質的転換に関してはあまりアナウンスされてこないのが問題だと思っている。
 SIではこれまでの稼ぎ頭だったビジネス分野、経営情報システムの分野は伸び悩んでおり、携帯やデジタルAV・家電などの組み込み分野が拡大しており、トップは組み込み分野に対する関心は非常に高い。ビジネス分野では、中国でのオフショア開発でコストを削減してやろうというのが主流であるが、その先の展望が見えていない。

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4月にスタートする内部統制
 内部統制については2年くらい前からの関心事となっているが、この4月からスタートする。内部統制には業務統制とIT統制の2つの分野がある。会計につながる全ての業務が正しく行われ、なおかつそこでコンピュータ処理が会計で行われるので、データ処理が正しく反映されているかどうかを証明できるようにするというのが業務統制の課題である。情報システムの企画、設計、開発、保守、運用も正しく行われなければならない業務統制に関連して、IT統制もしっかり行われなければならない。
 上場企業に於いて内部統制対応のための基幹システム改変のピークは過ぎているが、2008年度は準対象となる未上場の関連会社や主要取引先などのシステム改変作業が盛んになるだろう。全くそれらに関係のない企業の場合、上場していなくても大企業の場合には社会的責任は同じなので、4月1日からとは言わないまでも同じようなことを早い時期に行う必要がある。非上場の中小企業の場合には、現状ではそこまで厳しくはないが、例えばERP(統合業務ソフト)などを使って業務統制が向上することは望ましい。

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中堅中小企業へのERPの普及が課題
 ERPの大企業への導入は一段落している。そして、蓄積した生データの大福帳データベースや周辺システムとの連携を行い、それを如何に活用し成果を出すのかということが課題になってきている。
 中堅企業にとってはERPの価格がこれまでは高かったし、導入するための人材が社内にいない、というようなことがネックとなっていた。ERPの値段が下がってきたからといってもすぐに拡がる状況にはないが、ITで業務統合・連携しなければならない時代になってきている。大企業のERP導入はCIOなどのレベルでの交渉で良かったが、中堅中小企業の場合は経営トップを引き込まなければならない。
 中堅の場合、これまでERPの導入が遅れていたので、内部統制の流れがインパクトとなって導入が活発になる可能性はあるが、社長からは、会社の競争力を上げるとか、実際の現場の効果を出すといったことが可能になるかを明確に示して欲しいというニーズが強い。ベンダーが内部統制の時代だからと企業の責務のようにPRしたりアプローチすると反発される恐れがある。大がかりなIT投資に関しては中堅企業の経営者は疑心暗鬼になっている部分が強い。だが、長い目で見れば中堅企業にERP導入の流れは着実に広まっていくだろう。

 小さな小企業のレベルになると業務範囲がもっと狭いからERPでカバーしている範囲よりももっと統合化することが出来る、という面がある。会社の現場の設計図面から作業の進捗管理、受注、物流、会計などの企業のすべての業務から発生するありとあらゆるデータを統合し、データ連携させ、リアルタイムに全体を見ることができるようにする「超統合化」システムを自前で作っている企業がIT経営百選の認定企業から出ている。そういう発想は小企業だからできるのである。

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IT技術が高度化しビジネスモデル改変が重要に
 サーバーもブレードサーバーの時代になってきた。現場にローカルのサーバーが並んで現場ソリューションを行ってくれるのも結構だが、情報セキュリティ対策やプライバシーの問題などがあり、サーバーを中央に集め運用管理を一括して行うためにブレードサーバーを利用していくことがこれから本格的に拡がっていくだろう。運用管理は集中化するけれど、ソリューションはチーム単位でやるということを満たすには、ブレードサーバーは非常に効果がある。
 ソフトウェアの進化でグループウェアとCRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援システム)などの領域が曖昧になってきている。今はグループウェアに電子メール、情報共有機能だけでなく、商談管理、承認決済、ナレッジ活用などのあらゆる機能が盛り込まれ、エンタープライズワーキングと、グループワーキング、チームワーキングを全部サポートするようなツールになろうとしている。グループウェアの端末として携帯電話が使われるようになってきているが、携帯電話で、いつでも、どこからでも全ての業務の遂行がPCと同じような形でできるようになり、携帯電話のブラウザ経由でエンタープライズワーキングができることが明確になってきた。
 そうなると、かなり戦略的にビジネスモデルを変えることができる。ところが、大企業のシステム部門はそんなことをやっている暇は現状ではないということか、こういう問題への取り組みにはあまり熱心ではない。

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注目されるSaaS、3次元CAD
 中小企業の市場は膨大で、日本には450万社あると言われているが、ただ1社1社が小さく、ITベンダーにとってはなかなか儲かるといったところまでいかない。こうした問題に対応するためにシステムを導入しなくても済み、提供されたアプリケーションを使った分だけ課金するASP(Application Service Provider )というサービスが10年ぐらい前からあった。しかしそれが今、SaaS(Software as a Service)というものに変わろうとしている。SaaSは、業務(情報)システムを導入しないで、ユーザーが必要な業務アプリケーションを必要なだけ利用できる従量型サービスのことだが、従来のASPサービスとは違い、必要な機能を選択・連携などできるようにして個別企業に対してのサービスのカスタマイズが柔軟にできるようになる。このようなことができれば、中小企業はシステムを導入しなくても、安いだけでなく競争力を発揮するためにサービスが利用できることになる。現実化するには難しい点も多いが適応分野を限定すればかなり面白いことになるのではないかと思う。
 製造業においては3次元CADの普及が大きなインパクトを与えていくことになる。2次元から3次元CADに変わると製造業の仕事のやり方が画期的に変わる。設計図が2次元から3次元に変わっただけではなく、設計者自身の提案力が増したり、自立度が高まったり、オリジナル製品の開発の流れが出てきたり、3次元にしておけばマシニングセンターなどとの連携が可能になるなど、製造業の世界では3次元になると完璧に変わってしまう。単純な下請け構造でやってきた中小企業が自立して物を作ったり、提案していくようになるので、日本にとっては素晴らしいことが起こる。これは低価格の3次元のかなりすごいCADソフトがパソコンで動くようになったことが大きい。こうしたものが普及してくると、中小企業でこれらと連動・連携する周辺の情報システムの需要も増え、市場に活性化をもたらすことになる。

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IT戦略活用で日本の産業構造転換を
 現在、株価が下がったとか、景気が悪いといったことに一喜一憂し過ぎている嫌いがある。そうではなくて、企業のビジネスを付加価値型に転換して企業規模の拡大よりも利益を継続して出せる企業を創ることをITの戦略的活用で実現するように日本全体で取り組んで、日本の産業構造を21世紀型に転換していかなければならない。成長型のコストリーダーシップ戦略では、ごくごく一部の、超大手企業の中でもほんの10%くらいしか生き残れないだろう。

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これまでの記念講演会
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